バイトで副店長にマジ泣き 6

前回の続き
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5ゲーム目のグループ決め。お別れグーチョキパーでパー組となった俺の目に飛び込んだ光景はあまりにショッキングだった。

N君「パー組あつまれーーーー!wwwwww」


・・・・・!??これってどういう事だ・・・?ちょっと待て頭の中を整理しよう。

俺がパー組で、、で、、、パー組の集合かけてるのがN君で・・・。

ってことは・・・N君もパー組!?

4ゲーム目終了時まで、一度もN君と同グループになっていなかった。確率的にはそろそろ来なきゃむしろおかしいぐらいだ。
だが俺はこのパターンを完全に失念していた・・・。頭の片隅にも入っていなかった。見事に不意を突かれた。
そのため少しの間身動きが取れなくなり、他のメンバーよりも集まるのが遅れてしまった。
やっとこさ重い腰を上げパー組レーンへ向かう。すでに集まった3人が「あと一人誰だよーw」と会話しているのを耳にした俺は咄嗟に口が開く。

俺「あっ・・・あっあっあっ、あっのーー・・・自分もパーだったんすけど・・・ここでいいんですか・・・ねえ・・・・?」

一同静まり返る。
なんで?迎え入れられないのはまだ分かるが、なんで皆無言になるの?
ってあれだけキョドってしまったら当然か・・・。

この沈黙を破ったのはやはりN君だった。

N君「・・・・・・ああーーー、もこうさんだったんすかーーー!いやーーおしいっすね、Mさん辺り欲しかったんですけどww」

初っ端から嫌味全開のN。これはもう間違いなく、誰がどう聞いても嫌味だ。仮に本人がそのつもりで言ってないのなら、その無神経さに感服する。
他のパー組二人(ホールの先輩とキッチンの女の子)は笑ってごまかしていた。

頭の毛穴がブワッと開くような感覚が襲いかかる。「頭にくる」とはまさにあの事なのだろう。一度はだんまりを決め込んだ俺だが、今回ばかりはそうもしてられない。流石に腹が立った。何か、なんでもいいから仕返しがしたい。そういう衝動に駆られた。

今まで作り笑顔だった自分の顔を無表情へと転換する。
憤りはあるが、賭けをしている以上チームは勝たなければならない。だがそれでもN君へ何かしらの報復がしたい。

その両方に合致した行動をふと思いつく。


緊迫した空気の中、スタートした第5ゲーム目。
またしても1番目の俺は冷静に一投目を投じた。
すると、


「スッコーーーーーン!!」


開幕先頭打者ストライクである。正直狙ってはいなかった。完全なまぐれだ。
実はこのストライクこそ、さっき思いついた「報復行為」の足がかりとなる。
その機会が来るのが予想以上に早かったため少しとまどるが、このチャンス、下手したらもう二度とないかもしれないと思うと行動に出ざるを得なかった。

ストライクを取ったのだから当然メンバーは盛り上がる。N君も空気ぐらい読めるようで、「形だけの」ハイタッチをしようと駆け寄って来た。
ここだ。
俺がN君の両手を目掛けて歩み寄る、、N君は嫌そうに手を引く、
だがその逃げる両手追いかけんばかりに・・・・


バッチーーーーーーン!!


思いっきりハイタッチをかましてやった。

綺麗に決まった俺の超大袈裟ハイタッチは、きっと他のレーンのメンバーにまで聞こえる程大きな音を立てていたはずだ。

その後の周りの反応が怖くて一目散に席へ戻ろうとしたが、
呆然とするN君の姿が目に入ると、少し余韻に浸ってしまった。

無事着席する俺に、はっと息を吹き返したN君が囃し立てる。

N君「・・・っちょーーーもう、そんなことしたらあかんてーーwww俺キッチンやでーーww手命やでーーーwww」

正直なところ、俺もやりすぎたと思ってる。いくらむこうがネチリネチリ言ってくるかといって、一時的な感情に任せたあの行動は大人げないと言えよう。でも反省する気はさらさらない。
これで間違いなく、俺がN君に敵意を持っているということがN君自身にも伝わっただろう。

何事も無かったかのようにプレイが再開され、パー組レーンは着実に点数を稼いでいく。
それに加え、俺を除くメンバー同士の雑談も再び盛り上がってきた。
楽しそうに話すN君、しかし彼の喋りにはどこか俺を意識しているような物が感じられる。

「いやあーこの前クルーリーダーに入って来た○○さんめっちゃ面白いっすよねー。仕事もやりやすいし。あの人も今日ボーリング来てほしかったなーーーーー」
「女の子のハンデ30点はやりすぎ?いやいやそれぐらいしたらんと可哀そうっしょーー。男は3ケタ取って当たり前ですからねえww」

ここまで全ゲーム100点に届いたことが無い俺の傍でこんな話するんだからな。
さらにN君の態度はどんどんエスカレートしていき、ストライク取っても二人とだけハイタッチして俺を完全スルー。それどころか他レーンの奴らともハイタッチを交わす始末。
もちろん俺がストライクやスペアを取った時は無視。というかもはや投球シーンを見てすらいない。


とにかく露骨。露骨。露骨。

まぁ、無視されるならそれはそれで楽だ。もうずっとそうやっててくれ。
さっさと全部投げ終わってしまおう。と、5ゲーム目ラスト投球の番がまわってきたその時、急に照明が落ちる。何事かと思ったが、すぐに照明が落ちた理由が分かった。あれだ。

○○ンド・ワンのボーリングには「ムーンライトストライクゲーム」というコーナーがある。
ボーリング場の照明が落ちた時、順番が回って来た投者を対象とし、もしその投者が「ストライク」を取ると記念撮影をしてくれたりなんかもらえたりする。

そのムーンライトストライクゲームの投者に俺がたまたま選ばれてしまったというわけだ。
ああこりゃまた面倒な事が・・・。
後ろでN君たちが何やら言ってる。どうせ「なんでよりによってあいつが~」とか「俺がやりてえのに」 とかその辺だろう。
ここで再び思い切ってN君に歩み寄って見る。

俺「あの、代わったろうか?」
N君「は?別にええよ。はよ投げーや。」

実にさばさばした返答だった。今日のN君のテンションからは考えられない。
ムーンライトの投者を代わって欲しかったのは本音だったのだが、断られたら仕方がない。
ここは軽くストライクを取りN君をさらに苛立たせてやるか。
普段ストライクなんて狙わずに、出来るだけ多く倒すことだけを考えて投げる俺だがこの時ばかりは狙ってみた。

「ヒュッ   ビューン!!」
しかし、現実は甘くなかった。

「ガコッ!」


ここ一番でまさかのガーター。
ストライクを取っても大して盛り上がらない俺がよりにもよって一番最悪の結果を出してしまった。盛り上がらないどころの話じゃない、これはドン引きされるレベルだ。
でも待て、ムーンライトストライクゲームの投者は俺一人じゃない、各レーンに一人ずつ居る。自分だけに注目がいかないようお前らも失敗しろ!ミスれ!ガーターだ!!



スッコーーーン


隣レーンのキッチン社員さんがストライクを決めた。
一度俺に集まっていた注目がたちまち社員さんの方へ傾き、皆社員さんの所に駆け寄って大盛り上がりした。プロ野球の優勝決定シーンかと思った。
結果的に俺の糞ガーターは皆の前で晒しあげられずに済んだが、虚無感と人の失敗を願ってしまった罪悪感がこみ上げてきて、もうその場から消えてしまいたくなった。


色々ありすぎた5ゲーム目も終了。賭けの結果は、パー組は2位だったので関係無し。俺個人ではかなり健闘したのだが。(本日自己ベストの121点を記録)


最後のお別れグーチョキパーが行われる。とにかく早く帰りたいという気持ちが強くて、じゃんけんもグループ移動も何もかもが億劫だ。

しかし忘れてはならない。
俺が今ここに居るのはなぜなのか。 
皆に仲間外れにされて泣いてたからだろう。 
こうやって皆とボーリングをプレイ出来るのは誰のおかげなのか。
副店長だ。わざわざ車で連れてきてくれて、お金も全部出してもらうんだろう。
最後ぐらいさ、楽しく振る舞おうぜ。作り笑いでもいい、本当は楽しくなくてもいい、でも、副店長にはつまんなそうな表情を見せちゃダメだ。あの時の約束思い出せ。笑顔だ笑顔!わかったな、俺。

と、自分に言い聞かせた。
さあこい、次を耐えきれば全部終わりだ。開放される、家帰って寝れる。N君とも別々になれるしそう考えると楽だろう。本当に長かった。ここまでよく頑張った。そして副店長ありがとう。本当にありがとう。来て後悔してないと言えば嘘になるけれども、あなたへ募る感謝の念は本物です。


N君が高々と掛け声を上げる。



N君「いきますよー。グーチョキパーで、別れましょ!wwww」



ホールの先輩「グー」
キッチンの女の子「チョキ」
俺「パー」
N君「パー」













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