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副店長「なんや、皆ボーリング行ったで、いかんのか?」
俺はこの問いかけを捌け口に、一気に泣き崩れた。
俺「っ!!いっや、あの。。。俺誘われてないっすっ・・・・!!誘われてないんで、行くわけないんで・・・っ!!」
副店長「あー、・・・そうやったんかいな」
俺「いやっ・・・ちがっ・・・別にっあの、ボーリングいきたいとか、そんなんじゃ、、ズズッッ!ヒックヒック なっ、ないんスけど。。。いや、ちがうんっす、なんかっ・・いやっ、なんか寂しいな、みたいな・・・ええ・・はい・・・ズズズッ チーン」
副店長「・・・・・」
俺「っすんまっせん・・・・いや、まじで、汚いっすよね・・・ズズズズッ 何泣いてねん自分って感じっすよね・・・これ・・・あ“あ“ーーー ズズズーーーーッ!!ッチーーン」
副店長「いやいやいや、そんなん泣くことあらんへんやんか。」
俺「ズズズズーーーーッ はっ・・・あの・・・・いや、、もうええんで、、、これさっさとメモって。。。帰るんで・・・ぼくっ・・・!シュッシュッシュ ・・・・ ビェェエエエーーー!!」
副店長「!? ・・・い、いやな、そらな、分からんでもないで。そら人づきあいって皆難しいもんや最初は。でも君、まだ1ヶ月とか2ヶ月とかとちゃうの? 俺もこの仕事長ーやっとって、バイトの人間何人も見てきてるけどやな、そんなん、いきなりは皆誘われたりせーへんて。」
俺「・・・ズズズッッ」
その時は副店長の言葉に少し安心した。
でも、新人だろうと何だろうと、誘われる奴は普通に誘われるものじゃないか?
そう考えると、凄く気を使ってくれた発言だったんだなと今となっては思う。
副店長「うーん、やっぱり、みんな半年とかさ、もっと経ってから皆と打ち解けていく子が多いで。そら中にはずっと喋らん子とかもおるし、その逆のタイプの子だっておるし。もこう君も徐々に仲良ーなっていったらええんちゃうの?まぁ、俺も実際、あんま人とコミュニケーション取るの得意とちゃうねん」
俺「ぅぅっ、・・・っそうなんですか・・?ズズッ」
副店長「んああ、そうやで? 昔っからな、あんまそういうの得意とちゃう。やけどさ、こういう仕事やから、そらまぁ人とうまくやっていかんと話にならんし、自分と合わん人とだって時には無理やりつき合わなあかんこともあるやん。
特に、君らみたいな若い子相手なんかやと、世代がちゃうやん?やから、なに喋ってええんか分からんくてよう苦労するわw」
正直なところ、副店長の第一印象は、「典型的チンピラ」だった。
ガラが悪そうで、目つきも鋭く、目が合うとまるで自分が睨みつけられているかのような。かなり失礼なことを言うが、きっと学生の頃はやんちゃばかりしてた人なんだろうなと。
それだけに、「俺もコミュニケーションは苦手」という意外な発言は心底驚いた。
俺「あ、っあの、、、いや。。。ほんと、もう、大丈夫なんで・・・!ズルッ ・・・なんか、、ちょっと気が楽になりましたわ・・・すんませんでした今日はほんまに。いや、ほんまになっさけないっすわ自分。。もうほんま、大丈夫なんで・・・。これ(喫茶レシピ)戻してきますわ。。。お疲れさまっした・・・!。。」
ああ、本当に情けないな自分。たかたがボーリングに誘われないくらいで泣いてんだもんな。お前ここに何しに来てるんだよ。バイトだろ。金稼ぎだろ。仕事終わったんならはよ家帰って配信でもしとけよ。何、副店長相手に泣きついてんねん。傍には店長もおるのに。恥ずかしないんか。
こりゃ一生の黒歴史確定。
そうやって頭の中で自分を責め続ける。
それにしても今日は色々ありすぎた。兎に角早く撤収しよう。あんまり長くいても迷惑になる。
ものの8秒で喫茶レシピを元の場所に戻してきた俺は、改めて店長・副店長に帰りの挨拶をするため事務室に戻ろうとする。
その時副店長が中から出てきた。少し不意をつかれながらも俺は涙をぬぐい元気よく挨拶する。
「お疲れ様です!アップします」
すると、
副店長「もう準備ええんか?おっしゃ、俺らも行くかボーリング。」
俺「・・・・・・えっ。」
まさかの返事が返ってきた。
副店長「いやな、俺も途中参加することになっとるから、お前もこいや、ボーリング。時間大丈夫やろ?」
俺「っ!・・・いや、そんな、気使わんでいいですよ・・・!つーか今金ないんで・・・ええ、気持ちだけ受け取っときますわ。それに誘われてないし、いっても悪いと思うんで、帰ります。」
副店長「ええてええて、金は出したるからな、(チラッと財布をチラつかせる)ええから来いやもこう君。」
俺「っええ・・・でもっ・・・そんなん・・・」
曖昧模糊とする俺を副店長は強引に外に押し出し、車へと誘導した。
言っておくがマジで今金がない。財布持ってきてない。
大体俺誘われてないんだから絶対歓迎されない、空気読めてない、ありえない。俺が行くとか本当ありえない。ていうか、副店長も誘われてたのかよ・・・。
何が何やら分からないうちに、いつの間にか車の助手席に座っていた。
副店長「ほないこかー。中ちょっとごちゃごちゃしてるけど適当に除けて座ってくれや。ちょいボーリング場ちょい遠いけど辛抱しとれよ。」
俺「いや、マジでいいんですか?いや悪いですよ。俺行っても別になんもないっすよこれマッジで・・・。」
副店長「だからええって言っとるやんかw大丈夫やってなんとかなるわ。な!」
副店長はそう言うと携帯で誰かに電話し始めた。会話を聞く限り、先にボーリング場へ到着したメンバーと連絡を取ってるようだ。N君?ではなさそう。多分キッチンの社員さん。
副店長「おお、今終わったから向かうわ。二人な、二人。いけるやんな? ん?何?証明書?え、そんなんいるんか。
おい、ちょっともこう君、今証明書かなんかある?」
俺「えっ・・・あ。いや、財布忘れたんで・・・ちょっと何もない・・っすわぁ・・。」
副店長「 おーい、無い言うてるで。あかんの?大丈夫やろ?え、何?・・・まぁええわとりあえず今から向かうから。あ、もう先始めとってくれてええで。ほな」
アミューズメントパークでは深夜になると生年月日を証明する物を要求される。そういう訳で身分証明書の有無を尋ねてきたわけだ。
でもさっき言った通り、俺財布忘れたぞ。免許は持ってないし学生証も今ない。何も無い。もう諦めた方がいいだろこれは。
やっぱり俺行かない方がいいんだって副店長さんよ・・・。
とかなんとか考えてたら車発進。
もう流れに身を任せるしかない。どうとでもなれ。
車の中では相変わらずさっき号泣していた件を嘆く俺。それをうんうんと相槌打ちながら聞いてくれる副店長。
この頃になると流石に俺も泣き止んで平静を取り戻していた。ただ鼻水は何故か止まらなかったので、汚らしい事に車の中でもチーンチーンとかみまくった。あのティッシュペーパーで。
俺「あの、あんまこういう事言うのあれなんスけど、さっきの事忘れてください。俺どうかしてました。着いたら普通に振る舞うんでどうかよろしくお願いします。」
副店長「おお、それでええやん。分かっとるて。ただ、皆んとこ行っても下向いとったらあかんぞ。笑顔やで笑顔。」
まるで内気な小学生とその父親みたいな会話だ。。
「俺」という人物はこれでも成人なのだから笑える。
やがて車はボーリング場に到着した。一部伏字にするが「○ウン○ワン」である。
二人はエレベーターで受け付けカウンターへ向かい、事情を説明する。
先に来ていたメンバーと合流したいということ、俺に身分証明書がないということ。
ぶっちゃけた話ここで「どうしても必要なんですよ~~。どうかお引き取り下さい^^」とでも言われる方が良かった。でも副店長の仲介があって、なんと口頭での証明で構わないということになった。
受付の人「え~、では生年月日をお願いします。あと。西暦も。」
俺「・・・かくかくしかじか」
受付の人「ありがとうございます。今回特別に許可とさせていただきますが、次回からはお気をつけください。」
無事(?)受付をクリアした俺と副店長の二人はまず専用の靴を取りに行き、そのあとエレベーターでボーリング場へ。
ボーリングは嫌いじゃないが滅多にやらない。
久々にやるって言うんだから楽しみじゃない事もない。
でも、今日のボーリングが楽しい物になるはずがない。もうこの時点でそれは分かっていた。でもせっかく副店長が連れてきてくれてお金まで出してくれるっていうんだ。せめて無理にでも明るく振る舞ってやろうじゃないか。
そう心の中で覚悟を決めた。強く決意した。そのはずだった。
ボーリング場の階にエレベーターが到着し、ドアが開く。その瞬間。
「おーい、料理長きたぞーー あーほんまやー
おそいっすよーーw なにやってたんすか?
俺達始めずに待ってたんですよー!ww さあはやくやりましょー」
副店長「おお、皆お疲れさん。なんや、始めといてええっていったやないか。」
俺を歓迎する声は無かった。
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続きは明日。 地獄のボーリング6ゲーム。
残り2回更新くらいで終わる予定。
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